経審における資本性借入金の取扱いが変わりました

令和7年7月1日以降の経営事項審査において、一定の要件を満たす資本性借入金を自己資本とみなすことができるようになりました。

                             (2025.4.14国土交通省講演資料より抜粋)

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資本性借入金とは

経営事項審査において、自己資本とみなせる資本性借入金の要件は以下の通りです。
ただし残存期間が5年未満となった「資本性借入金」は、1年ごとに20%ずつ自己資本とみなす部分を逓減させます。

①償還期間が5年超
②期限一括償還

➡自己資本とみなすためには、長期間償還不要な状態でなければならない

③配当可能利益に応じた金利設定
 業績連動型が原則
 債務者が厳しい状況にある期間は、これに応じて金利負担が抑えられるような仕組みが講じられていること

➡例えば、黒字の翌年は金利3.5%、赤字の翌年は金利0.5%など、業績に応じた利率が適用されること

④法的破綻時の劣後性の確保
 (又は少なくとも法的破綻に至るまでの間において、他の債権に先んじて回収されない仕組みが備わっていること)

➡自己資本とみなすためには、法的破綻時に優先的に弁済されるものであってはならない

⑤貸出主が金融機関(政府系含む)であること又は以下の制度による借入であること

   ・挑戦支援資本強化特例制度 (日本政策金融公庫)
   ・新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付制度 (日本政策金融公庫)
   ・中小企業活性化協議会版「資本的借入金」
   ・中小企業活性化協議会版「資本的借入金」
    (新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付制度協調型)
   ・災害対応型劣後ローン (日本政策金融公庫)
   ・産業復興機構による既往債権の買取制度
   ・危機対応業務による中小・中堅・大企業向け劣後ローン (日本政策投資銀行・商工中金)
   ・株式会社東日本大震災事業者再生支援機構による既往債権の買取制度
   ・農林漁業経営資本強化資金

➡役員借入金を資本とみなす場合もありますが、今回の改正には含まれていません

経審の審査項目における取扱い

以下の審査項目において、資本性借入金のうち自己資本と認められる金額は「負債」から控除し、「自己資本」に加算されます。

  【審査項目】
 ・負債回転期間(負債から控除)
 ・自己資本対固定資産比率(自己資本に加算)
 ・自己資本比率(自己資本に加算)
 ・自己資本(自己資本に加算)

申請手続き・必要書類

・経営状況分析申請書
   資本性借入金のうち、いくらまでを自己資本として扱うかを記載

・「資本性借入金」該当証明書
   公認会計士・税理士・建設業経理士1級いずれかによる証明が必要

・契約書等
   「資本性借入金」該当証明書の添付資料として、当該借入金にかかる契約書が必要

・証明者の「登録経理試験の合格証明書」又は「登録経理講習の修了証」
   証明者が建設業経理士1級の場合に必要

資本性借入金を利用するメリット

資本性借入金には以下のメリットがあります。

①資本とみなされるので、借金をしているのに、倒産リスクの低い優良会社として金融機関から評価されます。
②借入期間中の元金返済がありませんので、資金繰りが改善します。

この機会に財務の強さをアピールできる武器として、資本性借入金の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

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